駆(か)けつけた消防隊の手で、完全に火が消されると、間もなく暁(あかつき)が来た。
課長は、焼跡を丹念(たんねん)に調べた。
その結果、一箇の無残(むざん)な焼死体が発見せられた。背骨からしてすぐ判定がついて、犠牲者(ぎせいしゃ)は気の毒な研究生小山すみれであることが分った。しかし美貌の男も美女も、現場に骨を残していなかった。
また仔猫の骨もなかった。帆村がさっき異常なる興味を覚えた妙な器具の入っている靴も、焼跡の灰の中には見当らなかった。
この博士邸(てい)の火が消えた後で、田鍋課長と帆村荘六とは、焼跡に立って、意見の交換をした。互いに知っている事実を語り合った結果、
「田鍋さん。これは面白くなりましたよ。化け鞄事件と、ラジウム盗難事件との間に密接な関係があるということが分って来たじゃありませんか」
と、帆村がいえば、田鍋課長は、
「どうもそういうことらしいね。しかしラジウムとお化け鞄と、どういうつながりになっているか見当がつかんが、君は何か思いあたることがあるかね」
「そのことだが、僕の考えでは、あの盗難(とうなん)に遭(あ)ったラジウムは、今どこか知らんが、兎(と)に角(かく)ちょっと手の届かない場所にあるんだと思うんですね。それでさ、あの万沢(まんざわ)とかいう男が小山すみれ嬢を唆(そその)かして、仔猫利用の吊上(つりあ)げ装置を作らせたんだと解釈(かいしゃく)する」
「どうしてそうなるのかね」
